沖の鳥島を原子力発電に伴う廃棄物、及び廃炉に伴う廃棄物の永久保存場にする案

秋山碩司

2020.7.17


はじめに

沖ノ鳥島の排他的経済水域内で、海洋調査を続ける中国に日本政府が抗議したことに対し、中国政府は「島ではなく
岩だ」と主張、「国連海洋法条約に基づけば、沖ノ島礁は『岩礁』であり『島』ではないからです」と。島であると
いう日本政府の説明が正しいとしても、地球の温暖化による海面の上昇は、2013年に公表されたIPCC第5次評価報告
書(気候変動に関する政府間パネル)によれば、今後2100年までに海面上昇は最低でも26センチ、最大で82センチとな
ると見積もられていますが、グリーンランドや南極大陸の氷解が加速していることから、海面の高さがこれまでの予測
を大きく上回り、2100年までに最大2メートル上昇する可能性があることが、最新の研究で明らかになりました。
この状況を考えると、十数年先にはほんとに沖の鳥島が島で無くなってしまう状況にあります。

一方、ドイツなど原子力発電をやめて風力発電や太陽電池発電などの環境にやさしい発電にするようになってきている
が、日本はまだ火力発電に頼っており、環境的に地球温暖化のCO2削減等の対策に逆行している状況にあります。
従って、CO2削減を目指すには、日本はまだ原子力発電が欠かせない状況にあります。

しかし、現状では、東京電力福島第一原発事故後、福島県内の除染で出た汚染土多量にあり、廃炉に伴なう高レベルの
放射性廃棄物等の置き場もまだ決定していません。しかも、原子力発電を動かすと、使用済み核燃料が発生します。
この処理と処理後の置き場がまだ決定していません。
このような状況で、国内の各市町村に核廃棄物の置き場の打診を行っていますがまだ未定の状況です。

従って,この中国から注文がついている沖ノ鳥島を、東京電力福島第一原発事故後の放射性廃棄物,土壌等を利用して、
埋め立てを行なえば、このような解釈はできなくなるわけで、検討の余地があります。加えて、核廃棄物置き場にする
案を検討しました。



1.沖ノ鳥島の状況

 沖ノ鳥島は、北緯20度25分、東経136度04分に位置し、東京から約1,700km、小笠原諸島父島から
でも約900km離れた我が国最南端の島です。

この島は、東西に約4.5km、南北に約1.7km、周囲11kmの卓礁で、我が国の国土面積(約38万ku)
を上回る約40万kuの排他的経済水域を有する国土保全上極めて重要な島ですが、満潮時には北小島、東小島の
2つの島が海面上に残るのみとなっています。

・知っていますか?沖ノ鳥島の秘密

沖ノ鳥島の地層はフィリッピンプレートの中央に位置し、安定した地層であり、放射性廃棄物を保管する地層と
して、最適です。

 


2 原子力発電ででる放射性廃棄物と東京電力福島第一原発事故後の放射性廃棄物

(1)原子力発電ででる放射性廃棄物

低レベル放射性廃棄物の状況及び高レベル放射性廃棄物の状況は、下記のwebで確認してください。

・低レベル放射性廃棄物の状況

・高レベル放射性廃棄物

このように、201012月末現在、使用済み核燃料棒が1702本ある。そのうち、青森県六ヶ所村、日本原燃・
再処理施設に1455本、茨城県東海村、日本原子力研究開発機構・再処理施設に247本ある。

201012月末までに生じた使用済燃料を全て再処理した場合、ガラス固化体は約24100 本分になる
(原子炉の中の燃焼分も含む)。

ガラス固化体の年間発生量は、約13001600本と想定。2021年頃には約4万本に達する見込みであり、
現在準備されている六ヶ所村の貯蔵施設はほぼ満杯になってきている。今後これらの保管をどのように
するか問題である。

 

 (2)東京電力福島第一原発事故後の放出された放射性廃棄物   

環境省の資料によれば、東京電力福島第一原発事故後、福島県内の除染で出た汚染土は1400万立方メートル
以上といわれており、福島県だけで22,000,000㎥の汚染土壌があるとされている。

環境省の資料 によれば、岩手、宮城、栃木、茨城、群馬、埼玉、千葉の7県の除去土壌の保管量は333,329㎥である。

がれきの処理、デブリの処理の状況

福島第一原発123号機の格納容器の中には、メルトダウンした核燃料と、溶けた機器などがあり、両者の一部は
一体化しています。発電所の建屋内外には、水素爆発などによって生まれた、もしくは地震・津波によって生じた
大量のがれきがあります。
既に撤去したものの量が、20181月末の時点でおよそ227000㎥となり、うち165000㎥は野ざらしです。

汚染水の状況

汚染水が、どんどん溜まっています。各建屋内の高濃度汚染水は58000トン、処理済みの汚染水は100万トンを超え
ています。その貯蔵タンクの設置のために伐採された樹木が134000㎥あります。使用済みの防護服は59000㎥。
これら可燃物を、焼却することで量を減らそうとしています。

事故前からの廃棄物が、200リットルのドラム缶換算で186000本ほど保管されています。使用済み燃料取り出し
のための大型機器や汚染水タンクなど事故収束のために投じられているさまざまな機器や設備も、敷地内の
すべての建物・設備も、やがて放射能のごみとなります。

 

 

3 沖ノ鳥島の埋め立て

福島県の22,000,000㎥の汚染土壌と、福島県外の汚染土壌333,329㎥ 合計22,333,329㎥と試算できる。この汚染土の
処分に環境省は頭を痛めている。この汚染土を沖ノ鳥島の埋め立てに使うことを考えてみよう。

沖ノ鳥島のサンゴ礁の礁原は東西4.5km,南北1.7kmに広がり.その内部は水深5.5m以浅の浅磯湖となっている。
下図参照

 

放射能汚染土の海への流失を防ぐため、サンゴ礁原の先端から約100m入ったところにぐるりと堤防を作成し、
汚染土を積み上げることにします。サンゴ礁原の先端から約100mは浅瀬で、サンゴ礁が群生しているため約100m
内側に堤防を作るようにしまします。これらの汚染土を沖ノ鳥島に積み上げるとすると沖ノ鳥島のサンゴ礁の内部
の浅い部分礁原の面積が約3,825,000
uなので、東京電力福島第一原発事故ででた汚染土壌を22,333,329㎥とすると約m積み
上げることができます。

沖ノ鳥島のサンゴ礁の内部の深さが3〜5mなので、この汚染土だけで約23mの陸地が作成可能です。

さらに、福島原発事故の発電所の建屋内外には、水素爆発などによって生まれた、もしくは地震・津波によって
生じた大量のがれきがあります。これらもここへ埋め込めば陸地の高さがさらに上昇します。

この上に放射能対策として表面にセメント舗装または汚染されていない土壌等何らかの被ばく対策が必要です。

これらの汚染土の運搬は、船か航空機になりますので、港湾、滑走路の建設が欠かせません。

従って、港湾及び滑走路の配置を考えると下図のようになります。

 

汚染水タンク2500m RUNWAY処理設備受入設備港湾施設

注)赤点線は、地下600mの放射性廃棄物処理施設の範囲


港湾施設及びランウエイの方向は、年間の潮流及び風向等によって場所の選定が必要となりますが、仮にこの
場所・方向で設定されています。

島ができて、港湾施設等ができれば、さらに、高レベル放射性廃棄物の輸送も可能になります。

そこで、ここを原子力発電から出た廃棄物の貯蔵施設をつくるとすれば、下図のような地下深い施設が必要と
なります。アメリカのニューメキシコ州カールズバッド核廃棄物隔離試験施設は、地下約600mの深さに建設
されているので、同様に600mの地下に作成するとすれば、掘削ででる土壌がさらに多量となり、島の陸地の
高さが 増すことになります。

なお、原発事故で出た高濃度汚染水の処理工場及びタンクも設置すれば、有効に機能するのではないかと
思われます。

日本原子力文化振興財団によれば、下図のような地下施設のイメージになります。

https://atomica.jaea.go.jp/data/pict/05/05010101/09.gif

 

地下300メートルより深い岩盤の中に埋め、放射能が10分の1に低くなるまで10万年以上もそこで保管し続ける
ことになります。10万年後といえば想像しにくいが、10万年前はネアンデルタール人の時代です。アメリカ合衆国
環境保護庁(EPA)ではWIPP施設(ニューメキシコ州カールズバッド核廃棄物隔離試験施設)の管理期間を1万年
としている。 未来への伝言として敷地周辺には各種の標識と警告文が国連公用語(英語・ロシア語・中国語・
フランス語・アラビア語・スペイン語)およびナバホ語で残される予定である。また現存する文明との非連続性
を考慮し象形文字での表示も考慮されている。

なお、カールズバッド核廃棄物隔離試験施設の建設にあたって、日本の某建設会社が建設に加わっていたと聞いて
おります。

 

4 終わりに

 中国は沖ノ鳥島周辺の海底の地層の探索を続けている現状であり、中国の主張に反応して、沖ノ鳥島を原発事故
から出た汚染土壌を利用して、埋め立て、核廃棄物処理場を作ったらどうなるかを考えてみました。
この埋め立て事業を行うことによって、中国の主張が解決するとともに、これらの施設が稼働すれば、原発の大きな
問題点すなわち使用済み核燃料の処理がスムーズに行われるようになり、原発の再稼働が容易に可能となり、CO2
の削減に寄与すると思われます。沖の鳥島の置かれた状況と、現状の原子力発電関連の置かれた立場を考慮すると、
意外に可能性があるのではないかと思われます。

 

 

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