陸海空自衛隊の隊員募集に赤信号が灯っている。
2023年度の自衛官採用は、陸海空で1万9598人の募集計画に対し、9959人。
達成率は過去最低の51%と公表された。極めて深刻である。
中途退職者数も近年、4000人前後で推移しているが年々増加しており、やがて6000人
を超えると危惧されている。
創設以来、自衛隊の最大の弱点は人的基盤が極めて薄弱な点にある。先ずは平和憲法の制約で
「必要最小限の防衛力」としているため編制組織の定員そのものが有事所要に満たないレベル
に抑えられている。例えば戦闘機飛行隊の人機基準(操縦者数/戦闘機数)は列国空軍の2.0に
対し空自は1.5に留まっており、有事における戦闘継続が極めて厳しい。加えてギリギリの
防衛費の制約で予算定員なるものが存在し充足率が低く抑えられてきた。今や防衛力強化で
防衛費は増えたが人が集まらない状態なのだ。
2024年3月末の自衛隊定員247,154人に対し現員は223,511人で23,643人の不足、充足率は90.4%。
幹部自衛官の充足率は高いが、若い自衛官「士」の不足が目立ち、定員54,116人に対して現員が
36,684人と、充足率が67.8%でしかない。近年、少子化や 労働人口の減少により我が国が深刻な
人的資源の不足を迎える中、民間も含めた人材獲得競争が益々厳しさを増している。
このため防衛省は、募集対象者の年齢上限を26歳から32歳に引き上げ、また50歳台の階級定年年齢
を段階的に延長する、そして、女性自衛官の比率を2030年には9%以上とするなど低充足率を補う
様々な施策を打ち出している。
防衛力の中核は人であり、先端兵器システムを運用するのは隊員である。この低充足率が続けば、
平時の自衛隊の任務遂行と諸活動に支障をきたすのみで無く、千変万化する武力攻撃事態などに
対応する有事の防衛作戦の遂行に重大な制約要因となる。
質の高い人材確保しようと自衛官の処遇改善などを主眼とした石破総理が肝煎りの法律がこのほど
国会で決議されたのは喜ばしい。その内容は勤務環境に対応する手当の新設、増額が主体であって、
国家公務員としての自衛官の格付けアップに直結する給与体系への踏み込みはない。
列国には生涯を通じての軍人恩給制度や税金の減免制度などがある。若人が進んで志願する自衛官
の魅力化には、これらについて国としての検討と大胆な決断が必要である。
「台湾有事は日本有事」と「自衛隊の憲法明記」など国民の防衛意識が高まりつつある今こそ、
厳しい環境の下で黙々と任務に励む自衛官に眼を向けて欲しい。自衛官は「服務の宣誓」で
「…事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」と
誓っている。国民を守る為に命を懸ける自衛官に対して社会一般に感謝・敬愛の風潮が広まり、
学校教育でも取り上げられてこそ、自衛官自身の自覚と誇りが高まり、もって若人の自衛官への
志願が高まると信じる。
遠望子