「台湾有事シミュレーションに思う」

 

遠望子(大串 康夫)       

コラム「羅針盤」8月号掲載    

 

   ロシアのウクライナ侵攻から早や2年半になろうとしている。21世紀にもなって 「力による一方的な現状変更の蛮行」が罷り通ろうとしている。 ウクライナ支援疲れや停戦交渉などが取り沙汰されているが国際社会はロシアの 平和に対する罪を決して許してはならず償わせなければならない。 インド太平洋地域に於いても軍事大国化した中国の力による一方的な現状変更の 試みが南シナ海、東シナ海で展開されており、極めて近い将来に武力による台湾 併呑の危機が迫っている。 所謂「台湾有事は日本有事」に留まらない。中国が台湾へ武力侵攻すれば、忽ち 米中戦争へと進み、近隣はもとよりNATO諸国をも巻き込んで第3次世界大戦に なるのではと危惧される。 それ故に日米を初めとする国際社会は台湾海峡事態の未然防止を最も重要な課題 と認識している。外交・政治努力の展開とともに同盟国の軍事態勢強化、同志国 との安全保障協力体制を構築して、侵攻に対する抑止力と対処力の拡充に余念が ない。と同時に抑止が破れた最悪事態を想定して台湾有事に関わる各種各様の シミュレーションを行っている。 一般的にシミュレーションとは、現存もしくは計画するシステムが想定する状況 の推移に対しての有効性、欠陥を明らかにして問題解決、改善を図るために行わ れる。 列国政府・国軍においては、想定する状況に対する構想、対処計画の適否と部隊 の作戦能力評価、問題点の改善を狙いとして研究ウオーゲーム、図上・実動の 軍事演習が行われているが、その内容は極秘として公開されることはない。 知る由もないが、わが国/.自衛隊でも当然行われていよう。 その一方で、いくつかの民間シンクタンク系のシミュレーションが実施されており、 その概要と成果が一般公開されて国民の関心を集めている。その多くは台湾海峡 を巡る緊張の高まりから中国の武力侵攻直前までの日本政府の政策決定や対応処置 に焦点を宛てている。自衛隊の行動や作戦レベルの話に及ばないのは民間なので やむを得ないが、日本の有事対処について数々の問題点が明らかにされている。 例えば、・武力攻撃事態等の認定プロセスと対処行動、 ・同志国との連合態様と集団的自衛権の問題、 ・台湾事態に呼応した北朝鮮、ロシアの挑発への対応、 ・拡大抑止と非核三原則、 ・有事所要兵力/.継戦能力の不備、 ・民間施設/能力の活用/徴用、 ・中・台・韓在留邦人及び先島諸島島民の退避、 ・ミサイル攻撃に対する国民保護、 などなどと枚挙に暇がない。 解決すべき問題点が山のように指摘されているのに驚かされる。その根源には、 戦後の平和憲法のもとで国民は国を守る義務もなければ戦争を考えること無く 過ごしてきた点にあり、国は戦争の惨禍から国民を守る諸施策を忌避して 防衛努力を怠ったツケが回ってきているのである。 今なすべきは、有事に至る残された時間は僅かであろうと、シミュレーション で明らかにされた問題点は直ちに検討を開始し解決へのアクションを取るべき である。特に、徒にわが国の防衛政策を自縄自縛している憲法については、 「憲法護って国滅ぶ」ことが無いように、早急に憲法改正もしくは解釈変更し て効果的な防衛作戦を可能ならしめることが焦眉の急である。                                 遠望子 【参考】   ・     中国の列島線   ・台湾侵攻戦争に日本は必ず巻き込まれる

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